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アニメデータ徹底解説 vol.2

「SHAREPOP」では一つのコンテンツに依存してどうコラボするのかを考えるのではなく、コンテンツが生まれるカルチャーを捉え、より本質的なカルチャーと企業プロモーションの融合を図ることを目的に研究し、企画に反映している。

ゆえに、カルチャーが生まれるまでをいかにリアルタイムで定量化して、その瞬間を先んじて捉えるかが重要だと考える。本解説では前回に続きシェアコトが得意とするアニメコンテンツマーケティングの領域から、ひとつのコンテンツが社会現象化するまでのSNSの動きを可能な限り時系列でまとめた。けものフレンズポプテピピックなど、社会現象コンテンツは図らずして事件事故的に発生する。その際に一喜一憂するのではなく、冷静にタイアップを検討する、あるいは事件事故になる前の予兆を感じるなどもできるかもしれない。

僕が連載している雑誌「アニメビジエンス」(株式会社ジェンコ発行)にて、アニメ周辺の取得可能な数字・データについてまとめた記事があるため、今回も許可をいただき転載の容認をいただいた。2015年の冬時点と少し古い事例ではあるが、社会現象コンテンツの発生までの道、そして以降の推移など参考になるものも多いと考える。

—以下アニメビジエンスVol10より転載—

データから読み解く『おそ松さん』という社会現象とその活用可能性

前回、アニメを企業マーケティングで活用してもらうために、定量化する重要性について、僕が調べている3つのデータ「Twitter、UGC(pixiv、コスプレなどユーザー生成コンテンツ)、Googleトレンド」を起点に書かせてもらった。

前回は7月(2015年)アニメを中心に概論を触れてきたわけだが、今回は恐れを承知で、とあるひとつの作品にのみフォーカスして進めていきたいと思う。その作品とは社会現象といっても過言ではない『おそ松さん』だ。もちろん社会現象といったからには理由がある。それは『おそ松さん』が持っているソーシャルメディア上の数字は、社会全体が話題にするであろう現象(天候やニュース)のそれに匹敵する数字となっているからだ。ではさっそくその社会現象「おそ松さん」の詳細と、メカニズムについて読み解いていこう。

まず、Googleトレンドで『おそ松さん』という検索ボリュームがいつからどの程度あがっているのかを見てみよう。社会現象というからには他の社会的なイベントとの比較が必要かと思い、測定日が年末だったこともあり「紅白歌合戦」と、ネット社会現象として定着している「ポッキーの日」、そして2015年の紅白にも出場し、最大級の社会現象アニメと言えるだろう『ラブライブ!』を入れてみた※1。検索ボリュームを表すGoogleトレンド上では、「紅白歌合戦」、「ポッキーの日」、「ラブライブ!」のいずれをも上回っている状態となった【図1】。

次に、Twitterでの話題数を『ラブライブ!』および、7月(2015年)アニメで最大の話題数となった『がっこうぐらし』と比較した。『ラブライブ!』の映画公開初週は、1日で約20万件ほどの“ライブライブ!”というキーワードがつぶやかれた。また、『がっこうぐらし』も、第1話の衝撃的な内容に引っ張られ、第2話では10万件以上の話題が出て、以降高い話題数となっていった。

僕の中での仮説にすぎないが、Twitter上の話題数が10万件を超えると、Twitter上では社会現象(多くの人がつぶやいたため、その現象を直接知っている知っていないにも関わらず、タイムライン上でその現象について目にする可能性が高い)と言えるのではないかと思っている。理由は、「暑い」とか「寒い」、「おはよう」、「おやすみ」などのキーワードは10万~30万程度で推移するからである。

そして肝心の『おそ松さん』だが、そのつぶやきの数は10万件を超える箇所が3ヵ所発生している。これは日本の多くの人が『おそ松さん』を知ってるかどうかに限らず、Twitterのタイムライン上で“おそ松さん”というキーワードを見ている可能性が高いと考える【図2】。

また、もうひとつ特徴的な傾向がTwitterから読み解くことができる。それは、『おそ松さん』は4話以降アニメを放送していない日ですら、つぶやき数のアベレージが5万件程度となっているということである。つまり放送時以外も放送内容に関わらずなんらかの『おそ松さん』についての話題がTwitter上であがっているということである。これは『がっこうぐらし』には見られてはいない。むしろこの数字の推移は第2期放送当時の『ラブライブ!』の数字に近いものとなっていると記憶する。

なぜそのような現象が起きているのか、これはpixivやコスプレのUGCを読み解くことによって顕著にわかってくる。それではさっそくUGCの数字を見てみよう。まずpixivについてだが、『おそ松さん』関連のイラスト投稿数は10月は5,500件ほど。これでも十分多いといえるが、しかし11月になると11月26日執筆時点で21,000件ほどに急激に伸びている。閲覧データは600万PVを超えており、これは『進撃の巨人』のアニメ放映時のピークであった250万を超える。11月のpixivのマンスリーランキングでは上位100作品中なんと53作品が『おそ松さん』関連であった。現在(2015年11月当時)pixivで最も人気のタイトルであると考えて過言はないだろう【図3】【図4】

次にコスプレイヤーズアーカイブで『おそ松さん』のコスプレ数を見てみると、10月はほとんど発生していなかったが、11月に入って急激に上昇してきている。

『進撃の巨人』や『ラブライブ!』などはピーク時に月間10,000件ほどの投稿があったため、コスプレ全体としては多いとは現時点では言えないが、確実に着火している数字であると言えよう【図5】

そこで話は戻るが『おそ松さん』が11月以降、アニメを放送していないときもつぶやき数のアベレージが5万件程度出ている理由は、11月に入ってからのpixivの急激な増加と、コスプレの着火が大きく影響していると考える。なぜなら、これらUGCの制作者は、投稿後ほぼ確実にTwitterにその情報を投下するからだ。自ずと放送日以外のつぶやき数が増えることは明白だろう。そして、この2種類のUGCの影響からいえることは、女性が多く、若く、低価格のグッズが売れるということである。実際、Twitterで『おそ松さん』とつぶやいている人、『おそ松さん』の公式アカウントをフォローしている人を見てみる女性である傾向が強いとなっている。
【図6】

アニメの情報を日々追われている読者の皆さんにとっては、『おそ松さん』の物販に関する情報がたくさん出ているから当たり前だと思われるかもしれないが、僕としては、Twitter、UGCのデータをクロスさせることで初めてその結論に達した。

つまり、Twitter上で日々途切れることなく多くの話題が出ており、若年層や女性が多いイラストやコスプレを通して、作品が深く理解され、公式ではないキャラクターですらコミュニケーションの対象となっているということである。

さらに細かく見れば、どのキャラクターやどのシーンが一番盛り上がっているのかも見ることができるため、今後打つべき施策などについても仮説が立てやすくなるだろう。

今回は図と具体的な話しが非常に多くなったが、『おそ松さん』は11月26日現在、確実に社会現象であるとここではまとめさせてもらう。しかし、アニメのライフサイクルは非常に短命である。アニメ終了後にはTwitter話題数が急激に下がってしまったり、時間をおいて2期を行った時にはTwitterのフォロワーが離れてしまっているとうい状態も多々ある。僕が見れている数字はあくまでTwitter上の話題とUGCに限ったものではあるため、イコール人気だとは言えないが、話題が多い状態を維持できるに越したことはないのではないだろうか。

また、『おそ松さん』に限らず、アニメ作品を分解して比較することで立ち位置が明確となり、今後の展開などについても仮説を立てやすくなるのではないかと考える。また機会があれば他の作品や時期を見ての深堀などもできればと思う。

初出:アニメビジエンスVol.10(株式会社ジェンコ発行)

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