
アニメデータ徹底解説 vol.1
「SHAREPOP」では一つのコンテンツに依存してどうコラボするのかを考えるのではなく、コンテンツが生まれるカルチャーを捉え、より本質的なカルチャーと企業プロモーションの融合を図ることを目的に研究し、企画に反映している。
ゆえに、カルチャーが生まれるまでをいかにリアルタイムで定量化して、その瞬間を先んじて捉えるかが重要だと考える。今回はシェアコトが得意とするアニメコンテンツマーケティングがどのようにして、アニメカルチャーの瞬間をとらえているのかを、わかりやすく説明したいと思う。
以前、僕が連載している雑誌「アニメビジエンス」(株式会社ジェンコ発行)にて、アニメ周辺の取得可能な数字・データについてまとめた記事があるため、今回、許可をいただき転載の容認をいただいた。
—以下アニメビジエンスVol9より転載—
アニメコンテンツマーケティングとは、アニメとは関係のない一般企業がアニメ(主に深夜帯)や周辺文化と共同でプロモーションをする際の体系をマーケティングフレームで整理することで、アニメを知らない方でも論理的に企画立案ができることを目的としている。
これまで、マーケティングに応用できるアニメの数字の可視化は企業のために行っていたが、実はその数字やフレームはアニメ業界においても継続的に定量化してきていなかったものであり、今後のアニメビジネスを考えるうえで有効かもしれないということで、今回より連載枠をいただくに至った。
第1回となる今回は、マーケティングに応用できるアニメ周辺の数字・データについて全体論を書いていきたい。まず、僕が調べているデータは大きく分けて3つである。Twitterの数字とUGC(ユーザー生成コンテンツ)の数字、そしてGoogleトレンドの数字だ。
Twitterの数字はさらにふたつに分類することができる。ひとつ目は公式アカウントのフォロワー数の推移、ふたつ目はそのアニメについて“つぶやかれている”数だ。なぜこの数字に着目しているのかというと、日本には“ながら視聴”というTwitterで実況しながら画面を見るという文化がある。深夜帯アニメにおいてはより“ながら視聴”が顕著であり、その数字を追うことで各アニメを“ながら視聴”している件数を相対的に比較することができるからである。
一般の企業担当者にとって、この“Twitter上で参加している件数”はアニメの熱量に興味を持ってもらうために非常に有効なのである。例えば、企業がプロモーション予算としてWEB上での話題化や、新規顧客層への販売促進を行おうと考えているとする。そうした場合、タレントを起用するなどはよくあるが、一方で企業担当者がアニメに造詣が深いとは限らない。そういったとき、僕はアニメコンテンツの提案をするにあたり、Twitterの数字を出すことで、タレントに比べてどのくらい“WEB上で話題にしている人が多いのか”などを説明することができ、企業担当者に選択の余地を与えることができる。
弊社の事例で言えば、昨年の若年層向けのニキビ薬、クレアラシルの企画では、夏のキャンペーンガールとしてカゲロウプロジェクトの如月モモちゃん、そしてカルピスの企画ではアニメではないが、声優の内田真礼さん、アーティストのLiSAさん、Pileさんなどの起用に至った。外資系製薬メーカーやナショナルクライアントのマーケティング担当の方に説明するためには数字が必須であると考える。
次にUGC(ユーザー生成コンテンツ)の数字だが、これは主にpixivとコスプレの数字である。アニメ業界においてこれらの数字はいわゆるファン活動であるがゆえに、その熱量・伝搬力に期待はしつつも、可視化してマーケティングに活かすということは、なかなかしにくい領域であったのだと思う。
pixivとコスプレの数字は、直接的にアニメ業界のパッケージやグッズに相関するか否かはまだ研究中であるが、概ね高い方がTwitterよりその作品に強固に参加している人数が多いと言えるだろう。イラストや衣装を作ってまで時間をかけて参加するということは、少なからずその作品に対して好感を持っていると考える。
この数字が多かったり、推移として今がピークにあるとき、その作品の熱量をわかりやすく企業に説明することが有効になってくる。また、作品内のどのキャラクター(カップリング)が最も人気があるのかということもここから読み解き説明することができる。
最後にGoogleトレンドの数字である。Googleトレンドとは、Google検索において、特定のキーワードの検索回数が時間経過に沿ってどのように変化しているかをグラフで参照できるサービスであり、Googleトレンドに任意のキーワードを入力して検索を行うと、そのキーワードが過去にどの程度検索されたのかについて、検索ボリュームの指数をグラフ推移で見ることができる。さらにGoogleニュースとの連動によって、どの時期にどのようなニュース記事が登場していたかについてもある程度見ることができる。
これはトレンドというだけあって、どのくらい“キテる”のか、過去に比べて今はトレンドが高いのか、低いのかを直感的に知ることができる。企業としてコラボレーションするにあたり、今人気がピークであるということを示すにあたり非常に有用である。
以上、僕が主に調べているデータについてざっくりと説明してきたが、今回は具体的にTwitterのデータについて(執筆時現在の)2015年7月期のアニメに絞って一部だが掲示してみたいと思う。まずは【図1】を見て頂きたい。
放送日が二日にわたるもの、収集の際の表記ゆれなどの若干の差はあるかと思うが、概ね図のように収集することができる。アニメに詳しい方であれば、原作ものなのか、オリジナルなのか、二期、三期とやっているのか、放送日放送網がどうなのか、男性向けか女性向けかなど、ざっくりとフィルターをかけながら見てみるのも面白いのではないだろうか。
Twitterの数字を見ることで、その変曲点や山の高さなど、気になるものが出てきたら、そのときに何があったのかを調べ、どういったポイントがTwitter上のファンにとって反応を得ているのか知ることができ、プロモーションを考えるにあたってのヒントとしている。
では具体的に、僕なりに【図1】の7月期アニメのデータから読み取れることを書いてみよう。まずだいたいのアニメというものは1話目を見て、自分に合う合わないなどあるため、1話目が最も高くなる。そして後半に向けて低くなるのだが、あるところで下げ止まりが起き、そのアニメの同時視聴最大数が安定すると考える。僕の中では、下げ止まりが10,000くらいだと企業に説明しやすい数字であると考える。理由は、『エヴァンゲリオン』や『進撃の巨人』『初音ミク』がアニメをやっていない現在で10,000前後がアベレージだからである。(ちなみにAKBが25,000、まどかマギカが5,000というのも覚えていて損はない)企業担当者もさすがにこれらは知っており、それより高いという話ができるからである。
ちなみに、1話目をより多くの方に見てもらうためにアニメ側ができることは、アニメ公式アカウントのフォロワー数をアニメが始まる前にしっかりとためておくことがポイントなのかと思っている。そうして【図2】のデータを見てみると、『がっこうぐらし!』、『干物妹!うまるちゃん』『Charlotte』『それが声優』などが、後評判、安定感、後半に向けての話題があると読み取るに至る。
ここからは気になったアニメについてピックアップし、フォロワー数の月間推移やフォロワー属性を示した【図3】を見てみると以下となる。
これを参考にしてみると、Twitterによる“ながら視聴”話題数が高いものは(「がっこうぐらし」、「Charlotte」)はフォロワー数が多く、後半に向けて盛り上がっていくとフォロワー数の伸びが大きくなる。“ながら視聴”話題数が高いものは20歳前後でわりと男女のバランスが取れているものの方が高い傾向にある。と、そんなことが読み取れるのではないだろうか。
企業に提案するにあたっての数字とはややズレた考察となってしまったが、ことTwitterにおいてだけでもここまでマーケティングに活用できそうなデータを取ることができ、データを蓄積することで今後はアニメが始まる前、開始直後などで予測を立てて仕掛けていくことも可能なのではないかと考えている。
以上、第一回はマーケティングに応用できるアニメ周辺データについて触れてきた。このようなデータが本誌の読者の方にとって有用であることを祈りつつ、今回はここまでとしたい。
初出:アニメ ビジエンスVol.9(株式会社ジェンコ発行)